BOM
150% BOMとは?バリエーション管理・100% BOMとの違いを解説
製品の仕様や構成が多様化すると、製品バリエーションごとに個別のBOMを作成・管理する方法では、設計変更や部品更新のたびに多くのBOMを確認する必要があり、管理が複雑になりやすくなります。
例えば、同じ製品シリーズに複数のモーター、電源、筐体、制御装置、付属機能がある場合、組み合わせごとにBOMを作成すると、製品バリエーションの増加にともなって管理するBOMも増えていきます。
150% BOMとは、製品ファミリーに含まれる共通部品、選択部品、代替部品、オプションなど、複数の製品バリエーションで使用する可能性のある構成要素をまとめて管理する「構成可能なBOM」です。
150% BOMに構成ルールや適用条件を組み合わせることで、顧客仕様や製造条件に応じて必要な部品を選び、特定製品の実構成となる100% BOMへ展開します。
本記事では、150% BOMの意味、100% BOMとの違い、バリエーション管理の仕組み、E-BOM・M-BOM・S-BOMとの関係、PLMで管理する際の注意点を解説します。
この記事のポイント
- 150% BOMは、複数の製品バリエーションで使用する可能性のある構成要素をまとめたBOMです。
- 「150%」は部品数量が1.5倍になるという意味ではありません。
- 構成ルールや適用条件を使い、150% BOMから特定仕様の100% BOMを導き出します。
- 150% BOMは、E-BOMやM-BOMとは異なる「製品バリエーション」という切り口の考え方です。
- 実務では、BOMだけでなく製品アーキテクチャ、構成ルール、変更管理、Effectivityまで整理することが重要です。
150% BOMとは
150% BOMとは、1つの製品シリーズや製品ファミリーに含まれる複数の製品バリエーションの部品・構成要素をまとめて管理する、構成可能なBOMです。
150%という数字は、部品数量が実際の完成品の1.5倍になるという意味ではありません。1つの完成品に必要な構成だけでなく、同じ製品ファミリーで選択される可能性のある構成候補やオプションまで含めた製品構成を表すために使われる呼び方です。
150% BOMには、例えば次のような情報を含めます。
- すべての製品バリエーションで共通する部品
- 特定の仕様でのみ使う部品
- 選択可能なオプション部品
- 代替関係にある部品
- 特定の地域・顧客・市場で使う部品
- 特定の期間や製品世代で適用される部品
- 選択肢同士の互換性や組み合わせ条件
つまり150% BOMは、単に「部品を多く含んだBOM」ではありません。どの部品が、どの条件で、どの製品構成に使われるのかをルールとともに管理することが重要です。
150% BOMを一言で表すと
製品ファミリー全体の「選択可能な構成」を持ち、条件を与えることで個別製品のBOMを導き出すためのBOMと考えると分かりやすいでしょう。
150% BOMと100% BOMの違い
150% BOMと100% BOMの大きな違いは、複数の選択肢を含んだ構成可能なBOMなのか、特定の製品仕様に確定したBOMなのかという点です。
| 比較項目 | 150% BOM | 100% BOM |
|---|---|---|
| 役割 | 製品ファミリー全体の構成候補を管理する | 特定製品の確定構成を管理する |
| 含まれる部品 | 共通部品、選択部品、代替部品、オプションなど | 特定仕様で実際に必要となる部品 |
| 構成 | 選択肢を含む | 構成が確定している |
| 主な利用場面 | 製品設計、製品ライン、バリエーション管理 | 製造、調達、個別受注、サービス |
| 条件 | オプション、互換性、適用条件などを保持する | 条件を適用した結果を表す |
| BOMの性格 | 構成可能な上位構造 | 特定仕様の実構成 |
150% BOMから100% BOMを作る例
例えば、ある製品シリーズに次の選択肢があるとします。
- モーター:AまたはB
- 電源:100Vまたは200V
- 操作パネル:標準または高機能
- 通信機能:ありまたはなし
150% BOMには、モーターA・B、100V・200Vの電源、標準・高機能パネル、通信機能に必要な部品など、製品シリーズで利用する可能性のある構成候補を登録します。
そこに「モーターB」「200V」「高機能パネル」「通信機能あり」という条件を適用すると、その仕様に必要な部品だけで構成された100% BOMを導き出すことができます。
150% BOM → 100% BOMの基本的な流れ
製品ファミリーの150% BOM → フィーチャー・オプションの選択 → 構成ルール・適用条件の判定 → 特定仕様の100% BOM
ただし、150% BOMから正しい100% BOMを作るには、単に部品候補を登録するだけでは不十分です。どの部品が必須なのか、どの部品を同時に選べるのか、どの条件で部品を切り替えるのかといった構成ルールが必要になります。
150% BOMが必要になる背景
製品バリエーションが増えるとBOMも増えやすい
製品バリエーションが少ない場合は、製品や仕様ごとに個別BOMを作成しても大きな問題にならない場合があります。
しかし、性能、サイズ、地域、顧客仕様、オプションなどの選択肢が増えると、組み合わせの数は急速に増加します。
例えば、5つの仕様項目にそれぞれ2つの選択肢がある場合、理論上は最大32通りの組み合わせが考えられます。さらに選択項目や選択肢が増えれば、個別に管理するBOMの数も増えていきます。
個別BOMでは変更反映が複雑になりやすい
製品バリエーションごとにBOMを複製して管理すると、同じ共通部品が複数のBOMに含まれることになります。
共通部品を変更した場合、関連するBOMをそれぞれ確認しなければならず、次のような課題が起こりやすくなります。
- 一部のBOMだけが更新される
- 旧部品と新部品が混在する
- どの製品へ変更を適用すべきか判断しにくい
- 製品バリエーション間で仕様が不整合になる
- 設計変更の影響確認に時間がかかる
- 似たBOMが増え、どれが正しい構成か分かりにくくなる
多品種少量生産や個別受注への対応
個別受注や受注生産では、顧客ごとに仕様や構成が変わることがあります。
ATO(Assemble to Order)のように、あらかじめ定義した選択肢から製品を構成する場合は、150% BOMと構成ルールの考え方を活用しやすくなります。
一方、ETO(Engineer to Order)のように顧客固有の設計を伴う場合も、「どこまでを標準構成として再利用し、どこからを個別設計とするのか」を整理するために、製品ファミリーや構成ルールを明確にしておくことが重要です。
150% BOMの仕組み
1. 製品ファミリーと製品アーキテクチャを定義する
150% BOMを作成する前に、どの製品を同じ製品ファミリーとして管理するかを整理します。
例えば、次のような単位が考えられます。
- 同じ基本構造を持つ製品シリーズ
- 共通プラットフォームを利用する製品群
- サイズや出力によって仕様が異なる製品群
- 市場・地域によって構成が異なる製品群
- 標準機と個別仕様機を含む製品群
そのうえで、製品をどのモジュールやサブシステムに分けるかを整理します。動力系、制御系、電源系、筐体系、通信系、安全・保護系など、製品の構造を機能や役割ごとに整理することで、共通部分と可変部分を把握しやすくなります。
2. 共通部品・選択部品・代替部品を整理する
次に、製品ファミリーに含まれる部品やアセンブリを整理します。
- すべての仕様で必要となる共通部品
- 特定のオプションを選んだ場合に必要となる部品
- 相互に選択する代替部品
- 特定の市場や地域でのみ使う部品
- 特定の期間や製品世代で適用する部品
- 顧客仕様に応じて追加する部品
150% BOMでは、部品が存在することだけではなく、「いつ」「どの条件で」「どの製品に」使用するのかを関連付ける必要があります。
3. フィーチャー・オプション・構成ルールを設定する
150% BOMでは、製品の仕様とBOMをつなぐために、フィーチャー、オプション、構成ルールなどを利用します。
フィーチャーは、製品が持つ機能や仕様を表します。
- 高出力
- 防水
- 無線通信
- 高温対応
- 特定電圧対応
オプションは、そのフィーチャーについて選択できる具体的な選択肢です。
- 100V / 200V
- 標準モーター / 高出力モーター
- 通信機能なし / Ethernet / 無線
- 標準筐体 / 防水筐体
構成ルールでは、オプション同士の関係や、選択した仕様に応じて必要となる部品を定義します。
- 200Vを選択した場合、100V用電源は選択できない
- 無線通信を選択した場合、専用アンテナが必要になる
- 防水筐体を選択した場合、標準ファンは使用しない
- 高出力モーターを選択した場合、対応する制御装置を選択する
- 特定地域向けの場合、対象となる仕様・部品を適用する
このように、150% BOMはBOM構造と構成ルールを組み合わせて管理することで初めて、実際の製品バリエーション管理に利用できます。
4. 受注・設計条件を入力する
顧客仕様や製造条件に応じて、必要なフィーチャーやオプションを選択します。
- 顧客仕様
- 製品タイプ
- 出力・容量
- 使用地域
- 電源仕様
- 追加機能
- 製造拠点
- 製品世代
- 適用期間
部品を一つずつ手作業で選択するのではなく、あらかじめ定義した構成ルールによって選択可能な範囲を絞り込むことがポイントです。
5. 100% BOMとなる実構成BOMを生成する
入力した条件と構成ルールをもとに、150% BOMから特定仕様の実構成BOMを作成します。
生成したBOMは、設計だけでなく、製造、調達、見積もり、サービスなど、後続業務の基礎情報になります。
その際には、単にBOMを生成できればよいわけではありません。
- 必要な部品が不足していないか
- 互換性のない部品が含まれていないか
- 構成が設計上成立しているか
- 製造できる構成になっているか
- 関連する図面や仕様書がそろっているか
- 対象となる製造拠点で利用できるか
- 適用期間や製品世代が正しいか
といった確認も必要です。
6. Effectivity(有効性)を管理する
Effectivityとは、部品や製品構成がどの条件、期間、製品範囲で有効なのかを管理する考え方です。
例えば、次のような条件が考えられます。
- 製品番号・型式
- 製品世代
- シリアル番号
- 製造拠点
- 地域・市場
- 適用開始日・終了日
- 規制・認証条件
- 顧客・案件
- ソフトウェアバージョン
同じ部品でも、製品世代や製造拠点、時期によって適用可否が変わることがあります。そのため、150% BOMを実務で利用する場合は、構成ルールだけでなく「いつ、どこで、何に有効なのか」まで管理することが重要です。
なお、Effectivityの名称や具体的な管理方法はPLM製品や運用によって異なります。システム機能から考えるのではなく、まず自社で管理すべき適用条件を整理することが重要です。
150% BOMとE-BOM・M-BOM・S-BOMの関係
150% BOMは、E-BOMやM-BOM、S-BOMとは異なる切り口の概念です。
| BOM | 主な目的 |
|---|---|
| E-BOM | 設計の視点から製品構成を管理する |
| M-BOM | 製造・組立の視点から製品構成を管理する |
| S-BOM | サービス・保守の視点から製品構成を管理する |
| 150% BOM | 複数の製品バリエーションを含む構成可能な製品構造を管理する |
したがって、150% BOMは「E-BOMの別名」ではありません。
設計段階で複数の製品バリエーションを含む150% E-BOMを管理し、構成ルールによって特定仕様の100% E-BOMを作成したうえで、製造条件を加えてM-BOMへ展開する、といった考え方ができます。
150% BOMと各BOMの関係イメージ
製品ファミリーの150% BOM → 構成ルール・適用条件 → 100% E-BOM → 製造条件を反映したM-BOM → 保守条件を反映したS-BOM
E-BOM、M-BOM、S-BOMは利用部門や業務目的によって構造が異なるため、150% BOMから作成した設計構成をそのまますべての部門で利用できるとは限りません。どの情報をどのBOMで正本とし、どのようにつなぐかを設計する必要があります。
PLMとBOM管理の全体像を確認したい方へ
150% BOMだけでなく、E-BOM・M-BOM・S-BOM、設計変更、CAD・ERPとの役割分担まで含めて確認したい場合は、PLMの基本解説もあわせてご覧ください。
個別BOM方式と150% BOM方式の違い
| 項目 | 個別BOM方式 | 150% BOM方式 |
|---|---|---|
| 管理単位 | 製品・仕様ごと | 製品ファミリー・製品プラットフォーム |
| バリエーション追加 | 新しいBOMを作成する | 選択肢や構成ルールを追加する |
| 共通部品の変更 | 複数BOMへの反映確認が必要 | 共通構造として整理しやすい |
| 初期設計 | 比較的分かりやすい | 製品構成・ルール設計が必要 |
| 製品数増加時 | 管理対象が増えやすい | ルール管理の重要性が高まる |
| 構成の自由度 | 製品ごとに個別調整しやすい | ルールに基づく標準化を進めやすい |
| 向いているケース | バリエーションが少ない製品 | 共通基盤を持つ多品種製品 |
150% BOMは、個別BOMを完全になくすための仕組みではありません。
実際の製造やサービスでは、特定仕様に確定したBOMや、工場、顧客、シリアル番号などに応じた実構成が必要になります。
製品ファミリーに共通する製品知識と構成ルールを150% BOMで管理し、必要な場面で100%の実構成へ展開するという役割分担が重要です。
150% BOMのメリット
製品バリエーションを追加しやすくなる
新しい仕様を追加するたびに完成したBOMを最初から作成するのではなく、既存の製品構造にオプションや構成ルールを追加することで、新しいバリエーションへ対応しやすくなります。
共通部品・モジュールを把握しやすくなる
複数の製品バリエーションで使用する部品を同じ製品ファミリーの中で整理することで、共通部品やモジュールを把握しやすくなります。
その結果、部品の標準化や再利用を検討するための基盤を整えやすくなります。
設計変更の影響範囲を確認しやすくなる
共通部品や選択部品がどの製品構成と関係しているかを整理することで、部品変更がどの製品バリエーションへ影響する可能性があるのかを確認しやすくなります。
ただし、変更影響を正しく把握するには、BOMだけでなく、版、変更情報、構成ルール、適用条件なども関連付けて管理することが重要です。
製造できない組み合わせを排除しやすくなる
構成ルールを設定することで、設計上成立しない組み合わせや、同時に選択できないオプションを事前に判定する仕組みを検討できます。
- 対応していない電源とモーターの組み合わせ
- 特定筐体には取り付けられない部品
- 同時に使用できないオプション
- 特定地域では適用できない仕様
- 特定製品世代には利用できない部品
E-BOM・M-BOM・S-BOM連携を考える基盤になる
設計段階の製品バリエーションだけでなく、製造拠点ごとの構成やサービス用の構成まで関連付けて考えることで、製品ライフサイクル全体のBOM管理へ発展させることができます。
150% BOM導入時の注意点
150% BOMを作ること自体を目的にしない
150% BOMは製品バリエーション管理を改善するための手段です。まず、何を改善したいのかを明確にする必要があります。
- 個別BOMの重複管理を減らしたい
- 新しい製品バリエーションを追加しやすくしたい
- 共通部品やモジュールを標準化したい
- 設計変更の影響範囲を把握したい
- 受注仕様から製造用のBOMを作成したい
- E-BOMとM-BOMの連携を改善したい
- サービス・保守情報までつなげたい
目的によって必要となる製品構造、構成ルール、管理属性、連携するシステムは異なります。
製品アーキテクチャを先に整理する
製品のモジュール構成や共通部分、可変部分が整理されていない状態で150% BOMを作ると、一つのBOMに多数の部品や条件が集まり、かえって複雑になる可能性があります。
少なくとも、次の点を整理しておくことが重要です。
- 共通部品と可変部品
- モジュールの境界
- モジュール間のインターフェース
- 選択可能なオプション
- 代替部品の関係
- 選択できない組み合わせ
- 製造・調達・サービスへの影響
構成ルールの管理責任を決める
構成ルールは設計部門だけの情報とは限りません。製造、調達、品質、営業、サービスなど複数部門の条件が関係することがあります。
「誰がルールを定義するのか」「誰が承認するのか」「変更時にどの部門へ確認するのか」を決めておかなければ、システム上の構成ルールと実際の業務がずれていく可能性があります。
すべての組み合わせが製造可能とは限らない
150% BOMに含まれている部品だからといって、自由に組み合わせられるわけではありません。
- 機械的・電気的な互換性
- ソフトウェアとの整合性
- 製造可能性
- 調達可能性
- 規制・認証への適合
- 生産拠点ごとの条件
- サービス・保守への影響
- 適用期間・製品世代
などを確認し、構成結果が実際に成立するかを検証できる仕組みが必要です。
150% BOMと実構成BOMの役割を分ける
製品ファミリーを管理する150% BOMとは別に、実務では次のような構成が必要になる場合があります。
- 特定仕様に確定した100% E-BOM
- 製造拠点ごとのM-BOM
- 顧客・注文ごとの製品構成
- 実際に製造されたAs-Built構成
- 保守後の状態を表すAs-Maintained構成
どのBOMをどの部門が管理し、どの情報を正本とするのかを整理することが重要です。
Excelから移行する場合はデータ品質を確認する
現在ExcelなどでBOMを管理している場合は、150% BOMへ移行する前に既存データを確認する必要があります。
- 重複部品
- 廃止部品
- 部品番号の表記揺れ
- BOM階層の不整合
- 数量の誤り
- 図面・仕様書との未連携
- 版数・改訂履歴の不足
- オプション・適用条件の未整理
150% BOMをシステム上に作成しても、元となるデータやルールが不整合なままでは、正しい製品構成を導き出すことは難しくなります。
150% BOMの適用範囲から整理したい方へ
GBSでは、150% BOMの導入ありきではなく、現在のBOM、製品バリエーション、設計変更、CAD・ERPとの役割分担を確認しながら、どこから製品構成管理を見直すべきか整理します。
CONTACT Softwareで150% BOMを管理する方法
製品構造とバリエーションをPLM上で管理する
CONTACT Softwareでは、製品構造とBOMを管理する機能の中で、150% BOMを活用した製品バリエーション管理の考え方が提供されています。
製品バリエーションごとに個別のBOMを作り続けるのではなく、製品ファミリーで利用する構成要素をまとめ、オプションや構成ルールを利用して個別の製品構成へ展開します。
GBSが導入支援するCIM Databaseでは、150% BOMを含む製品構成管理に加え、BOM、図面、文書、設計変更などの製品情報を関連付けて管理し、設計から製造・サービスまで情報をつなぐPLM基盤として活用できます。
150% BOMだけでなく後工程とのつながりを考える
製品構成管理では、150% BOMを作成して終わりではありません。
構成したE-BOMを製造側へどのように展開するか、設計変更をM-BOMへどのように反映するか、ERPへどの段階でBOMを渡すかなど、後工程との情報連携まで含めて設計する必要があります。
CIM Databaseでは、製品構造の比較や製品バリエーション管理だけでなく、E-BOMとM-BOMを含む複数の製品構造をつなぐ仕組みも活用できます。
CONTACT Software導入前に整理したいこと
- 現在、製品バリエーションをどの単位で管理しているか
- 製品・仕様ごとの個別BOMがどの程度存在するか
- 共通部品と選択部品を識別できるか
- オプション間の互換性や制約条件が定義されているか
- 構成ルールを誰が管理するか
- E-BOMとM-BOMの変更責任がどの部門にあるか
- 工場ごとにM-BOMが異なるか
- ERPへどの情報を連携するか
- CADとBOMをどのように連携しているか
- サービス・保守用の製品構成を管理する必要があるか
GBSでは、CONTACT Softwareの製品機能だけを起点にするのではなく、現在の業務、BOM、製品情報、既存システムを確認したうえで、150% BOMを含む製品構成管理の適用範囲をご相談いただけます。
CIM DatabaseでのBOM管理を詳しく見る
CIM Databaseでは、150% BOMによるバリエーション管理に加え、BOM、設計変更、図面・文書、E-BOM・M-BOM連携などを一つの製品情報基盤として整理できます。
150% BOMに関するよくある質問
150% BOMは「部品が150%ある」という意味ですか?
いいえ。150%という名称は、実際の完成品より部品数量が1.5倍になるという意味ではありません。複数の製品バリエーションで使用する可能性のある共通部品、選択部品、代替部品、オプションなどを、一つの構成可能なBOMとして管理する考え方を表します。
150% BOMと100% BOMはどう違いますか?
150% BOMは、製品ファミリー全体の構成候補やオプションを含む構成可能なBOMです。100% BOMは、顧客仕様や製造条件などを適用した結果として確定した、一つの具体的な製品構成を表します。
150% BOMとスーパーBOMは同じですか?
スーパーBOM、マスターBOM、Configurable BOMなどの名称が、複数の製品バリエーションの構成要素をまとめて管理する近い考え方として使われることがあります。ただし、用語の範囲や機能はシステムによって異なるため、名称だけでなく、構成ルール、個別BOM生成、Effectivity、変更管理などの管理範囲を確認することが重要です。
150% BOMとバリエーション管理は何が違いますか?
150% BOMは、複数の製品バリエーションを含む製品構成を管理するためのBOMの考え方です。バリエーション管理は、製品の機能、オプション、構成ルール、製品アーキテクチャ、適用条件、ライフサイクルなどを含めて製品の多様性を管理する、より広い考え方です。150% BOMは、バリエーション管理を実現するための重要な構造の一つと考えられます。
150% BOMはE-BOMですか?
必ずしもそうではありません。E-BOMは設計目的で見たBOMを指し、150% BOMは複数の製品バリエーションを含む構成可能なBOMを指します。設計段階で150% E-BOMとして管理することはできますが、150% BOMとE-BOMは異なる切り口の概念です。
150% BOMはM-BOMにも利用できますか?
製造側でもバリエーションを持つ構成を管理する考え方は利用できます。ただし、E-BOMとM-BOMでは目的や構造が異なります。M-BOMでは、製造工程、組立単位、工場ごとの違い、製造上必要な部品などを考慮する必要があるため、150% E-BOMをそのままM-BOMとして利用できるとは限りません。
Effectivityとは何ですか?
Effectivityは、部品や製品構成が、どの製品、期間、製造拠点、地域、シリアル番号などに適用されるかを管理する考え方です。150% BOMに含まれるすべての部品が常に有効とは限らないため、製品世代や適用期間などの条件を管理することが重要です。
150% BOMはどのような企業に向いていますか?
製品バリエーションが多い企業、共通プラットフォームから複数製品を展開している企業、個別受注や受注生産を行っている企業、製品ごとに似たBOMを多数管理している企業などでは検討する価値があります。一方、製品構成がほぼ固定され、バリエーションも少ない場合は、150% BOMが必ずしも適切とは限りません。
Excelで150% BOMを管理できますか?
構成候補や簡単な選択条件であればExcelで整理できる場合もあります。一方、部品間の互換性、構成ルール、変更履歴、承認、Effectivity、E-BOM・M-BOM連携などまで継続的に管理する場合は、ファイルの重複や更新漏れが起こりやすくなります。現在のデータや運用を確認し、PLMで管理すべき範囲を検討することが重要です。
CONTACT Softwareで150% BOMを管理できますか?
CONTACT Softwareでは、150% BOMを活用した製品バリエーション管理の考え方が提供されています。GBSが導入支援するCIM Databaseでは、BOMや製品構造に加え、図面、文書、設計変更などを関連付けながら製品情報を管理できます。実際の対象範囲や既存システムとの連携方法は、製品構成や業務要件に応じて検討する必要があります。
150% BOMの導入は何から始めるべきですか?
まず、製品ファミリーの単位、共通部品と可変部品、製品アーキテクチャ、選択可能なオプション、構成ルール、適用条件を整理します。そのうえで、E-BOM・M-BOM・S-BOMの関係、CAD・ERPとの役割分担、変更・承認の責任部門を確認し、対象製品や対象部門を限定して適用範囲を検討することが重要です。
まとめ:150% BOMは製品バリエーションを「構造とルール」で管理する考え方
150% BOMとは、製品ファミリーに含まれる共通部品、選択部品、代替部品、オプションなどを、一つの構成可能なBOMとして管理する考え方です。
そこに製品仕様、オプション、構成ルール、Effectivityなどの条件を組み合わせることで、顧客仕様や製造条件に応じた100% BOM、つまり特定製品の実構成を導き出します。
150% BOMを活用することで、製品バリエーションごとに似たBOMを増やし続けるのではなく、共通する製品構造と「どこが違うのか」を整理して管理しやすくなります。
一方で、150% BOMは部品を一つのBOMへ集約すれば完成するものではありません。製品アーキテクチャ、構成ルール、Effectivity、変更管理、製造可能性、E-BOM・M-BOM・S-BOMの役割、既存CAD・ERPとの連携まで含めて設計することが重要です。
自社に150% BOMが適しているかを判断する際は、「どのPLM機能を使うか」から始めるのではなく、現在どのように製品バリエーションを管理し、どこでBOMの重複や変更反映の負荷が生じているのかを整理するところから始めるとよいでしょう。
150% BOMやバリエーション管理の進め方をご相談ください
GBSでは、150% BOMの導入ありきではなく、現在のBOM管理や製品情報の流れを確認し、製品アーキテクチャ、構成ルール、E-BOM・M-BOM連携、既存CAD・ERPとの役割分担を含めて適用範囲を整理します。
- 150% BOMが自社に適しているか確認したい
- 製品・仕様ごとに増えた個別BOMを見直したい
- バリエーションやオプションを整理したい
- E-BOM・M-BOMの連携方法を検討したい
- Excelで管理しているBOMを見直したい
- CONTACT Softwareでの実現方法を確認したい
AIエージェント時代の設計DX|PDMからPLMへ – オンラインセミナー
2026年9月11日開催|オンラインセミナー
AIエージェント時代の設計DX
PDMからPLMへ ― BOM・設計変更情報をどうつなぐか
受注設計型製造業が直面する設計情報の分散問題。その解決が、AIエージェントを設計業務で活用していくための第一歩です。
Zoomウェビナーの登録ページが開きます
開催日
2026年9月11日(金)
時間
15:00~16:00
形式
オンライン(Zoomウェビナー)
参加費
無料
受注設計型製造業の設計DX課題
産業機械、生産設備、FA自動化設備、工作機械など、案件ごとに仕様・構成が変わる受注設計型製造業では、設計情報の管理がますます複雑になっています。
多くの企業では、CADシステム、PDM、ERP、図面検索システム、ワークフローなど複数のシステムが導入されています。しかし、それぞれが個別に機能しているだけでは、設計情報を部門や業務の壁を越えて活用することは容易ではありません。
同時に、生成AIやAIエージェントを設計業務へ活用したいという期待も高まっています。しかし、AIエージェントが設計業務を横断的に支援するためには、図面、部品、BOM、仕様、変更履歴などの情報が関連づけられ、必要な情報を参照できる設計情報基盤が重要になります。
本セミナーでは、受注設計型製造業が直面する設計情報管理の複雑さを整理し、PDMで培ってきた設計情報資産をどのようにBOM・設計変更管理・PLMへ広げていくか、そしてそれがなぜAI活用の基盤となるのかを、具体的かつ実務的にお伝えします。
このような課題はありませんか?
受注設計型製造業の設計・技術部門で起こりやすい課題です。
PDMを導入しているが、BOMや設計変更管理まで一体化できていない
図面や部品情報は管理できているものの、各案件の構成情報や変更による影響の把握が複数のシステムに分散している。
図面は管理できているが、部品・案件・仕様書との関係を追いにくい
図面を管理できていても、その背景にある設計意図や案件の文脈、外部仕様書などとの関連付けが十分ではない。
CAD、PDM、ERP、図面検索、ワークフローが個別に分かれている
各システムは必要に応じて導入されているものの、システム間のデータ連携が十分ではなく、情報の二重入力や不整合が発生している。
設計変更の影響範囲を複数のシステムで確認している
部品変更の波及範囲を把握するために複数のシステムを行き来し、手作業で影響を追っている。
過去案件の設計情報を再利用しにくい
類似案件や過去の設計が存在していても、必要な情報を効率的に検索し、次の案件へ活用する仕組みが十分ではない。
設計ノウハウが担当者や個別システムに分散している
ベテラン設計者が持つ知見や過去の失敗事例が、個人のファイルや経験の中に留まっている。
AIを活用したいが、AIに参照させる設計情報が整理されていない
AI導入への関心はあるものの、どの情報をどのような形でAIへ提供すればよいのか整理できていない。
AIエージェントから図面・BOM・技術文書を横断的に活用したい
AI時代を見据え、複数の情報源を横断的に参照・活用できる情報基盤の必要性を感じている。
これらの課題の背景には、「システムが不足している」ということだけではなく、既存の設計情報が十分に関連づけられず、分散した状態で存在しているという問題があります。本セミナーでは、この構造的な課題にどう向き合うかを掘り下げます。
なぜ今「AIエージェント時代の設計DX」なのか
設計情報管理の複雑さと、AI活用への期待が同時に高まっている
受注設計型製造業では、これまでCAD、PDM、ERP、図面検索、ワークフローなど、目的に応じてさまざまなシステムが導入されてきました。その結果、個々の業務は効率化されても、設計情報全体を横断して活用するという点では課題が残るケースがあります。同時に、生成AIやAIエージェント技術の進展により、設計業務でのAI活用への期待も高まっています。
AIエージェントが活躍するには「つながった情報」が重要
AIエージェントを設計業務に活用する場合、単一のシステムやデータソースだけでは十分でないケースがあります。「この部品は過去どの案件で使われたか」「この設計変更はどこまで影響するか」といった問いに答えるには、図面、BOM、部品、案件情報、設計変更履歴などが関連づけられ、必要に応じて横断的に参照できることが重要です。
「検索・気付き」から「業務支援」へ
AI活用は、必要な情報を検索・要約する段階から、複数の情報を確認しながら次の業務を支援する段階へ広がりつつあります。そのためには、AIそのものを導入するだけでなく、AIが判断材料として利用できる設計情報の関係性を整えておくことが重要になります。
PDMで築いた資産をPLMへ段階的に広げる
すでにPDMで図面や部品情報を管理している場合、その資産を活かしながらBOM、設計変更管理、製造・調達情報との連携へ段階的に広げていくことができます。本セミナーでは、大規模な刷新を前提とせず、既存資産を活かしながらPLMとAI活用へつなげていく考え方を紹介します。
本セミナーで分かること
60分のセミナーを通じて、以下のポイントを整理します。
01
受注設計型で設計情報が複雑化する理由
なぜ案件ごとに仕様が変わる製造業では、設計情報管理が難しくなるのか。その構造的な理由を整理します。
02
PDM・PLM・ERP・図面検索の役割の違い
各システムが何を管理し、どのような役割を担うのか、相互の関係を整理します。
03
PDMからBOM・設計変更管理・PLMへ広げる考え方
既存のPDM資産を活かしながら、管理対象を段階的に広げていく考え方をご紹介します。
04
図面、部品、BOM、文書、変更履歴を関連づける仕組み
分散した情報を相互に関連づけ、必要なときに参照できる状態へ近づけるための考え方を整理します。
05
AIエージェントを活用するために必要な設計情報基盤
設計情報基盤とAIエージェントをどのようにつなぎ、どのような業務活用が考えられるのかをご紹介します。
06
全面導入ではなく、小さく始める方法
大規模なシステム刷新を前提とせず、現状の環境を活かしながらPoCや段階導入につなげる考え方をご紹介します。
セミナープログラム
オープニング
ご挨拶、株式会社グローバルブレインスクエア・登壇者紹介、本日のテーマと問題意識の共有
第1部:AIエージェント時代に求められる設計情報基盤
- なぜ今、設計DXとAIエージェントを一緒に考える必要があるのか
- 受注設計型製造業で設計情報が複雑になりやすい理由
- 図面、部品、BOM、仕様、案件、変更履歴が分散する問題
- AIエージェントを活用するために必要な「参照できる情報基盤」
- 単にAIツールを導入するだけでは不十分な理由
第2部:PDMからPLMへ ― BOM・設計変更情報をどうつなぐか
- PDMとPLMの違い、それぞれの役割
- PDMで管理してきたCAD・図面・部品情報をどう活かすか
- E-BOM(Engineering BOM)とM-BOM(Manufacturing BOM)の関係
- 設計変更情報を製造・調達などへどうつなぐか
- ERP、図面検索、ワークフローなど既存システムとの役割分担
- 設計部門だけで閉じず、製品ライフサイクル全体へ広げる考え方
第3部:PLMとAIエージェントで設計業務はどう変わるか
- PLM上で図面・BOM・文書・変更履歴がつながる意味
- 過去案件・類似部品・設計ナレッジの再活用
- AIエージェントによる横断検索の考え方と利用イメージ
- 「この部品は過去どの設備で使われたか」などの利用イメージ
- AI活用の前提として必要なデータ整備
- 全面導入ではなく、小さく始めるPoCと段階導入の進め方
質疑応答
事前質問への回答、当日のQ&Aを予定しています。ご質問の状況により、希望者のみ16:10頃まで延長する場合があります。
セミナーの構成:第1部でAIエージェント時代の設計情報基盤について問題意識を共有し、第2部でPDMからPLMへの展開を具体的に解説します。そのうえで、第3部ではPLMとAIエージェントをどのように接続していくかをご紹介します。
こんな方におすすめです
受注設計型製造業の設計・技術・DX推進・情報システム部門などで、次のようなテーマを担当されている方を想定しています。
経営層・部門責任者
- 設計部長、技術部長
- DX推進部門の責任者
- 設計DX全体の戦略を検討している方
設計・技術部門の実務担当者
- 設計DX担当者
- BOM、設計変更管理担当者
- 設計情報管理に関わる担当者
システム企画・導入推進担当者
- PDM/PLMの導入・刷新を検討している方
- 情報システム部門の企画・導入担当者
- 既存システムの統合・連携を検討している方
AI活用を検討している方
- AI活用を検討しているが、設計情報基盤に課題を感じている方
- AIエージェント導入を見据えた準備を進めたい方
- 設計情報の整備がAI活用にどうつながるかを知りたい方
登壇者プロフィール
岩本 謙一郎
株式会社グローバルブレインスクエア 代表取締役
約30年にわたり、製造業の業務改革、SCM(サプライチェーン・マネジメント)、PLM(製品ライフサイクル・マネジメント)、設計情報管理に関するコンサルティングに従事してきました。
現在は、受注設計型製造業を中心に、PLM導入、BOM・設計変更管理、製品情報基盤の構築を支援しています。
ドイツのPLMベンダーCONTACT Softwareのソリューションを活用した導入支援に加え、PLMや既存業務システムに蓄積された情報をAIエージェントから活用するための構想・実証にも取り組んでいます。
製造業の現場課題を踏まえながら、業務とシステムの両面から導入・活用を支援しています。
開催概要
- セミナー名
- AIエージェント時代の設計DX
PDMからPLMへ ― BOM・設計変更情報をどうつなぐか - 開催日
- 2026年9月11日(金)
- 時間
- 15:00~16:00(60分)
- 開催形式
- オンライン(Zoomウェビナー)
- 参加費
- 無料
- 申込方法
- 事前登録制
- 主催
- 株式会社グローバルブレインスクエア
Zoomウェビナーへの事前登録をお願いします
下のボタンからZoomの登録ページへ進み、必要事項をご入力ください。ご登録後、Zoomから参加用の情報が案内されます。
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よくある質問
PDMをまだ導入していませんが、セミナーの内容は参考になりますか?
はい。本セミナーでは、PDM製品そのものではなく、「設計情報をどのように管理し、今後どのように活用していくか」という考え方から整理します。これからPDMを検討される場合にも、将来的なBOM管理・設計変更管理・PLMへの展開を考える際の参考にしていただけます。
製品説明が中心のセミナーですか?
本セミナーでは、受注設計型製造業における設計情報管理の課題と、PDMからPLM、さらにAIエージェント活用へつなげていく考え方を中心に解説します。具体的なソリューションは、考え方や利用イメージを理解していただくための例としてご紹介する予定です。
自社の具体的な状況について質問できますか?
質疑応答の時間を設けていますので、ご質問をお寄せいただけます。個別の検討が必要な内容については、セミナー後に改めてご相談いただくことも可能です。
複数名で参加できますか?
はい。設計部門、技術部門、DX推進部門、情報システム部門など、異なる立場の方にご参加いただくことで、セミナー後の社内検討にもつなげやすくなります。Zoomウェビナーへの登録は、原則として参加される方ごとにお願いします。
システムの専門知識がなくても参加できますか?
はい。本セミナーは、設計・技術部門の責任者や実務担当者、DX推進、情報システム部門など幅広い方を想定しています。システムの詳細な技術解説だけではなく、「何が課題なのか」「どのような順序で考えるべきか」を中心に解説します。
AIエージェント時代を見据え、設計情報基盤をどう整えるか
設計情報をつなぐことは、PLM導入だけでなく、将来のAI活用を進めるための重要な土台になります。PDMからPLMへ、既存資産を活かしながら段階的に進める考え方を60分で整理します。
2026年9月11日(金)15:00~16:00|オンライン開催|参加無料
AIエージェント時代のサーキュラーエコノミー|製品・設備情報基盤が重要な理由
製造業において、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への関心が高まっています。資源効率の改善、廃棄物の削減、製品寿命の延長、リユース・リマニュファクチャリング、使用実績に基づくサービスモデルなど、従来の「作って、売って、捨てる」モデルから、資源を循環させるモデルへの転換が求められています。
IoTデータ、デジタルツイン、AIエージェントを組み合わせることで、その循環を実務として動かせるのではないか。そうした期待も広がっています。
ただし、「IoTセンサーとAIを導入すれば、サーキュラーエコノミーを実現できる」という単純な話ではありません。循環型業務では、AIエージェントが何を参照し、どの製品・設備データを根拠にし、製品ライフサイクルの文脈をどこまで理解できるかが重要になります。
GBSは、AIエージェント時代のサーキュラーエコノミーを、単なる環境対策ではなく、AIエージェントが循環型業務を支援するための製品・設備情報基盤づくりとして捉えることが重要だと考えています。
製品情報、BOM、設計変更、設備データ、保全履歴、稼働実績などが整理され、信頼できる情報として管理されていなければ、AIは現場の判断に使える回答を返せません。反対に、製品・設備情報基盤が整っていれば、AIエージェントは予知保全、部品の再利用判断、設計改善へのフィードバック、使用実績に基づくサービス運用などを支援できるようになります。
この記事のポイント
- AIだけでサーキュラーエコノミーを実現することはできません。
- PLMの製品情報と、IoT・デジタルツインの設備情報をつなぐ必要があります。
- AIの導入前に、正本、関係性、履歴、権限を整理することが重要です。
- 小さな対象業務から検証し、段階的に適用範囲を広げる進め方が現実的です。
前回の「AIエージェント時代のPLM」では、AIエージェントが製造業の実務で活躍するためには、まず製品情報基盤が整っていなければならないという視点を紹介しました。
本記事では、その視点を製品ライフサイクル全体へ広げます。PLMが製品・設計情報の基盤であり、IoTやデジタルツインが設備・稼働情報の基盤であるならば、サーキュラーエコノミーは、両者をつなぐ情報基盤の上で実務化されます。
AIだけではサーキュラーエコノミーを実現できない
AIの性能が高くても、参照する製品・設備情報が整理されていなければ、現場で使える回答にはなりません。
サーキュラーエコノミーの実務では、たとえば次のような問いが発生します。
- この部品はどの製品に使われており、廃止後はどの代替品に置き換えられるのか。
- この設備にはどの程度の残存寿命があり、いつ保全を実施すべきか。
- 修理に必要な部品は在庫にあるか。回収品や類似設備から再利用できる部品はあるか。
- この製品の素材構成は、対象となるリサイクル要件を満たしているか。
- 設備の稼働データや不具合情報を、次期製品の設計改善にどう反映するか。
こうした問いに答えるには、AIよりも先に、製品情報と設備情報の構造、関係性、履歴が整理されていなければなりません。BOM、図面、設計変更、IoTセンサーデータ、保全履歴、稼働実績、不具合報告などが分断されている状態では、AIが参照できるのは個別の断片に限られます。
生成AIも同様です。文章生成や検索、要約に優れていても、単独で導入しただけでは循環型業務は前進しません。PLM、IoTプラットフォーム、デジタルツイン、保全管理、ERPなどと接続し、業務に必要な文脈と根拠を与える必要があります。
AIエージェントを検討する際には、「どのAIを使うか」だけでなく、AIが使うべき製品・設備情報が整理されているかを確認することが重要です。
AIエージェントを支える製品・設備情報基盤
AIエージェント時代には、PLMとIoTプラットフォームを、それぞれ独立した管理システムとしてだけでなく、AIが循環型業務を安全かつ実務的に支援するための情報基盤として捉える必要があります。
重要なのは、単に大量のデータを集めることではありません。
- どの製品情報が正本なのか。
- 現在有効なBOMや図面はどれか。
- どの設備データが、どの製品や部品に対応しているか。
- どの設計変更が、どの稼働結果や不具合に関係しているか。
- 誰がどの情報を閲覧し、更新し、承認できるか。
- AIの回答や提案が、どの情報を根拠にしているか。
こうしたライフサイクルの文脈を管理できて初めて、AIは現場の判断に利用できる情報を提示できます。
PLMが担う情報
PLMは、BOM、図面、仕様、素材情報、設計変更、部品構成など、製品に関する正本情報を管理します。
IoT・デジタルツインが担う情報
IoTやデジタルツインは、センサーデータ、稼働時間、負荷状態、異常履歴、保全履歴など、製品や設備が実際にどのように使われたかを管理します。
両者を関連付けることが重要
製品情報と稼働実績がつながることで、AIは「どの部品が、どの条件で、どの程度使われ、どのように修理・再利用・改善できるか」を検討できるようになります。
AIエージェントが「答えるAI」から「循環型業務を前に進めるAI」へ変わるには、PLMとIoT・デジタルツインをつなぐ情報設計が必要です。
サーキュラーエコノミーで想定されるAIエージェント活用例
予知保全と設備寿命の延長
AIエージェントは、温度、振動、圧力、稼働時間などのIoTデータと保全履歴を参照し、劣化傾向や異常の兆候を整理できます。保全担当者に点検候補や確認すべき項目を提示することで、故障後の対応から、状態に応じた保全への移行を支援します。
ただし、設備データが継続的に蓄積され、保全履歴とひも付いていることが前提です。拠点や設備メーカーによってデータ形式が異なる場合は、AI活用の前に識別方法やデータ項目を整える必要があります。
部品の再利用とリマニュファクチャリング
回収した製品や部品について、使用期間、修理履歴、負荷状態、部品構成などを参照し、再利用可能性を検討する際の候補をAIが提示できます。代替部品や過去の類似事例を探す作業にも活用できます。
そのためには、BOMの粒度、品番、属性、版、代替関係が統一されていなければなりません。最終的な再利用可否は、品質基準や安全基準に基づいて人が承認する運用も必要です。
デジタルプロダクトパスポートへの対応支援
デジタルプロダクトパスポート(DPP)では、対象となる製品に応じて、素材、構成、修理、再利用、リサイクルなどに関する情報管理が求められます。
AIエージェントは、PLMやBOMに登録された情報の収集、必要項目の確認、不足情報の抽出などを支援できます。ただし、元データが文書や部門ごとに分散し、どれが正本か分からない状態では、規制対応の根拠として利用できる情報にはなりません。
なお、DPPの具体的な要求項目や適用時期は、製品分野ごとの法令や今後の委任法令などによって段階的に定められます。対象製品に応じて、欧州委員会などの公式情報を継続的に確認する必要があります。
使用実績に基づくサービスモデル
設備の稼働時間、利用頻度、負荷状態などを継続的に把握できれば、定額保守、従量課金、成果に応じたサービスなど、使用実績に基づくサービスモデルの設計・運用を支援できます。
契約や課金の根拠として使用する場合には、データの欠損、測定方法、履歴保存、変更管理などを明確にし、関係者が同じ情報を確認できる状態にすることが重要です。
設備データから設計へのフィードバック
フィールドで発生した不具合、保全内容、交換部品、稼働条件を製品情報と関連付けることで、設計部門が次期設計で確認すべき課題をAIが抽出できます。
不具合情報だけを収集しても、対象となるBOM、図面、仕様、設計変更とつながっていなければ、具体的な改善対象を特定することは困難です。製品情報と設備情報を双方向につなぐことが必要です。
廃棄物と資源効率の改善
製造実績、品質データ、材料使用量、廃棄量、エネルギー使用量などを横断して参照することで、廃棄物が多く発生している工程や、改善を検討すべきポイントを抽出できます。
AIが提示するのは、あくまで分析結果や改善候補です。品質、コスト、納期、安全性なども含めて、人が総合的に判断できる業務設計が必要です。
まずは対象業務を絞った検証が有効です
すべての製品・設備情報を最初から統合する必要はありません。予知保全、部品再利用、設計改善など、優先度の高い業務を一つ選び、必要なデータとシステム連携を確認する進め方が現実的です。
AIエージェント時代の基盤整備で確認したい7つのポイント
1.製品・設備情報の正本をどこに置くか
BOM、図面、仕様、設備台帳、IoTデータ、保全履歴について、どのシステムを正本とするかを決めます。正本が曖昧なままAIを接続すると、回答の根拠や更新状況を確認できません。
2.PLMとIoT・デジタルツインを分断しないか
PLMの製品情報とIoTの稼働情報を、製品番号、部品番号、設備番号、シリアル番号などによって関連付けます。両者の関係がなければ、使用実績を設計改善や部品再利用へつなげることは困難です。
3.設計変更を知識として蓄積できるか
変更内容だけでなく、「なぜ変更したか」「どこに影響したか」「どの不具合や稼働実績が根拠になったか」まで追える状態を目指します。AIが改善提案を支援するには、判断の背景が必要です。
4.ライフサイクル全体のトレーサビリティを確保できるか
素材、調達、製造、使用、修理、回収、再利用、リサイクルの各段階について、必要な情報を追跡できるか確認します。すべてを一度に整備するのではなく、対象製品や規制要件に応じて優先順位を付けます。
5.権限、承認、根拠を管理できるか
AIが閲覧できる情報の範囲、提案内容を承認する担当者、回答の根拠となった情報を記録できることが重要です。特に再利用、保全、品質、規制対応などに関する判断を、AIだけで完結させない設計が必要です。
6.関連システムと連携できるか
PLMやIoTプラットフォームだけでなく、ERP、保全管理、品質管理、文書管理、サステナビリティ管理などとの連携を検討します。APIなどを通じて、必要なデータを適切な権限で利用できる構成が求められます。
7.Fit to Standardに加えてFit to AIを考えているか
標準機能に業務を合わせることは、導入・運用負荷を抑えるうえで重要です。さらにAIエージェント時代には、標準化した情報が「AIから参照できる」「関係性をたどれる」「根拠を確認できる」「別の業務でも再利用できる」状態になっているかを確認する必要があります。
Fit to Standardから、Fit to AIへ。
将来のAI活用を見据えて製品・設備情報基盤を設計することが、循環型業務を継続的に改善するための土台になります。
CONTACT Softwareで製品情報と設備情報をつなぐ
CONTACT Elements for IoTは、製品開発情報とフィールドで取得した設備情報を、デジタルツインを通じて関連付けるためのIoTプラットフォームです。
BOM、部品情報、設計データなどの製品情報と、稼働状態、測定データ、異常履歴、保全履歴などを関連付けることで、製品が設計された後に、実際の現場でどのように使われたかを追跡しやすくなります。
こうした情報基盤は、予知保全だけを目的とするものではありません。フィールド情報の設計部門への還元、部品の再利用検討、サービス事業の運用、将来のAIエージェント活用など、製品ライフサイクル全体にまたがる業務の基盤として利用できます。
関連サービス
- CONTACT Software:製品ライフサイクル全体を支えるプラットフォームについて紹介しています。
- CONTACT SoftwareのIoTプラットフォーム:デジタルツインによる製品情報とフィールド情報の連携について紹介しています。
- IoT導入支援:IoT活用の要件整理、設計、実装、運用支援について紹介しています。
- GBS AIソリューション:既存業務・既存システムを活かしたAIエージェント導入支援について紹介しています。
GBSがご支援できること
GBSは、サーキュラーエコノミーへの対応を、単なる環境対策や単独システムの導入としてではなく、製造業DXを支える製品・設備情報基盤づくりとしてご支援します。
AIエージェントを導入すること自体を目的とせず、AIが循環型業務で機能するための情報設計、業務設計、システム連携、運用設計までを含めて検討します。
- 現状整理・構想策定:対象業務、製品情報、設備情報、関連システム、運用上の課題を整理します。
- PLM導入・活用支援:BOM、設計変更、図面、文書、素材情報などの管理方法を設計します。
- IoT・デジタルツイン基盤構築支援:設備データの取得、蓄積、可視化、製品情報との関連付けを支援します。
- PLMとIoTの連携設計:製品・部品・設備・稼働実績の関係を整理し、ライフサイクル情報を追跡できる構成を検討します。
- API連携・業務自動化支援:PLM、IoT、ERP、保全管理、品質管理などをつなぎ、情報収集や確認作業の自動化を支援します。
- AIエージェントを見据えた情報設計:AIが参照するデータ、権限、根拠表示、承認フロー、運用ルールを設計します。
重要なのは、特定のAIツールを先に決めることではありません。まず、自社の製品情報、設備データ、BOM、設計変更、保全履歴などが、AIエージェントから利用できる状態になっているかを確認することです。
よくあるご質問
AIエージェントがあれば、サーキュラーエコノミーを実現できますか。
AIエージェントだけで実現できるものではありません。AIが循環型業務を支援するには、信頼できる製品・設備情報基盤が必要です。PLMの製品情報と、IoT・デジタルツインの設備情報が整理され、関連付けられて初めて、予知保全、部品再利用、設計改善などの支援に利用できます。
IoTセンサーを設置すれば、予知保全を始められますか。
センサーの設置だけでは不十分です。取得するデータ、測定頻度、異常の判定方法、設備台帳や保全履歴との関連付け、通知後の業務フローまで設計する必要があります。まずは停止時の影響が大きい設備など、優先度の高い対象から段階的に検証する方法があります。
デジタルプロダクトパスポートへの対応は、いつから必要ですか。
DPPレジストリは2026年7月20日に運用が開始されています。ただし、企業に求められる具体的な情報項目や義務化時期は、製品分野ごとの法令や委任法令などにより段階的に定められます。自社製品が対象となる制度を確認したうえで、素材、部品構成、修理、再利用、リサイクルに関する情報を早めに整理することが重要です。
PLMとIoTプラットフォームは、別々に導入してもよいですか。
個別に導入することは可能です。ただし、将来的に製品情報と稼働情報を活用する場合は、製品番号、部品番号、設備番号、シリアル番号などによって両者を関連付けられるように設計しておくことが重要です。
AIエージェントと生成AIは同じものですか。
同じ意味で使われることもありますが、厳密には異なります。生成AIは文章生成や要約などのモデル機能を指すことが多く、AIエージェントは、生成AIに加えて検索、システム連携、ツール実行、業務フローの支援などを行う仕組みを指します。
まずAIツールを導入し、後から情報基盤を整備してもよいですか。
限定的なPoCであれば可能ですが、本番業務では課題が生じやすくなります。正本、更新状況、権限、情報の関係性が整理されていないと、回答の根拠を確認できず、判断業務に利用することが難しくなります。PoCと並行して、必要な情報基盤の整備方針を検討することをおすすめします。
サーキュラーエコノミー基盤の整備には、どの部門が関与すべきですか。
設計、製造、保全、品質、情報システム、DX推進、調達、環境・サステナビリティなどの横断的な関与が望まれます。対象業務によって必要な部門は異なるため、最初に目的と対象範囲を明確にすることが重要です。
どの業務からAI活用を始めるとよいですか。
業務上の課題が明確で、必要なデータを確保しやすく、効果を確認しやすい領域が適しています。たとえば、特定設備の保全支援、過去の不具合検索、交換部品候補の確認、設備情報からの設計課題抽出などです。全社展開を前提にせず、対象を絞って検証し、データと運用の課題を確認しながら広げていきます。
AIエージェント時代の製品・設備情報基盤をご検討中の方へ
サーキュラーエコノミーを実務として進めるには、AIそのものだけでなく、PLM、IoT、デジタルツイン、BOM、設計変更、保全履歴、関連システムを整理した製品・設備情報基盤が重要です。
GBSでは、現状業務とデータの整理、PLM・IoT基盤の構想、CONTACT Softwareの活用、システム連携、AIエージェントを見据えた情報・運用設計までご相談いただけます。
参考情報
AIエージェント時代のPLMとは
製造業でAIエージェントへの期待が高まっています。検索、要約、問い合わせ対応といった補助業務だけでなく、BOM確認、設計変更の影響把握、図面や技術文書の横断検索、過去案件の再利用、プロジェクト進捗の把握まで、設計・開発の現場でAIを使いたいという声は確実に増えています。
ただし、ここで重要なのは「AIを導入すれば業務が変わる」という単純な話ではないことです。製造業の実務では、AIエージェントが何を参照し、どの情報を根拠に答え、どこまで業務文脈を理解できるかが成果を左右します。
GBSは、AIエージェント時代のPLMを設計情報管理のための仕組みとしてではなく、AIエージェントが業務で活躍するための製品情報基盤として捉えるべきだと考えています。
BOM、図面、文書、要求仕様、設計変更、プロジェクト情報などが整理され、信頼できるデータとして管理されていなければ、AIは現場で使える答えを返せません。逆に言えば、製品情報管理が整っていれば、AIエージェントは単なる会話ツールではなく、設計・開発・製造の実務を前に進める存在になれます。

AIエージェントが製造業で注目される理由
AIエージェントが製造業で注目される背景には、設計・開発業務の複雑化があります。開発スピードの要求は高まる一方で、製品は多品種化し、部門横断の調整は増え、技術情報は散在し、ベテランの知識継承も課題になっています。
これまでのように、人が必要な情報を探し、読み比べ、関係部門に確認しながら判断するだけでは、スピードにも再現性にも限界があります。そこで期待されているのが、必要な情報を横断的に探し、文脈に応じて整理し、次のアクションにつながる形で支援するAIエージェントです。
特に製造業では、単なるチャット機能ではなく、設計・製造・品質・保守にまたがる情報をつなぎながら、現場の判断を支援することが求められます。つまり、製造業におけるAIエージェントの本質は、「AIが自然な文章を返すこと」ではなく、「業務に必要な製品情報へ適切にアクセスし、活用できること」にあります。
AIだけでは業務改善できない理由
GBSは、AI単体では業務改善できないと考えています。なぜなら、AIの性能が高くても、参照する情報が整理されていなければ、現場で使える答えにはならないからです。
たとえば、次のような問いは製造業では日常的に発生します。
- この設計変更はどのBOMに影響するのか
- 類似部品は過去に存在したか
- この要求仕様はどの図面・試験項目・文書と関係しているか
- 過去案件ではどのような判断がされていたか
- 現在参照すべき正しい版はどれか
これらに答えるためには、AIそのものよりも先に、製品情報の構造と関係性が整っていなければなりません。BOM、図面、仕様書、変更履歴、要求仕様、プロジェクト情報が分断されたままでは、AIは断片的な補助しかできません。
ChatGPTのような生成AIも同様です。生成AIは非常に有力な技術ですが、単体で導入しただけでは製造業DXは前進しません。実務で使うには、PLMデータ、ERP、文書管理、BOM、設計変更情報などとAPI連携し、必要な文脈と根拠を持たせる必要があります。OpenAI APIも、エージェント構築においてはコンテキスト、ツール、業務システム連携が重要であることを示しています。
つまり、AIエージェントを導入する前に問うべきなのは、「どのAIを使うか」だけではありません。まず問うべきなのは、AIが使うべき製品情報が整理されているかです。
AIエージェントを支えるPLMという考え方
ここでPLMの役割が変わります。これまでPLMは、設計情報管理、図面管理、部品表管理、変更管理の仕組みとして語られることが一般的でした。もちろんそれらは今後も重要です。
しかしAIエージェント時代には、PLMを単なる管理システムとしてではなく、AIエージェントが安全かつ実務的に使える情報基盤として捉える必要があります。
PLMが重要なのは、情報を集めるからではありません。どの情報が正本なのか、どの版が有効なのか、誰が参照できるのか、どの変更が何に影響するのか、といった業務文脈を持って管理できるからです。AIエージェントに必要なのは大量データではなく、文脈付きで信頼できるデータです。
この意味で、PLMは「設計情報管理」から「AIエージェントの情報基盤」へと、その価値の見え方を変えつつあります。
- 正しいBOMにAIがアクセスできること
- 図面・仕様書・要求仕様が関連付けられていること
- 設計変更の前後関係と影響範囲が追えること
- 案件・製品・部品・文書・人の関係がたどれること
- 権限や承認ルールを守ったままAIが利用できること
こうした状態が整って初めて、AIエージェントは「答えるAI」ではなく、「業務を前に進めるAI」になります。
世界のPLM市場も同じ方向へ進んでいる
これはGBSだけの考え方ではありません。世界のPLMベンダー各社も、表現は異なっていても、AIを単体機能としてではなく、PLMやデジタルスレッド上の情報を活用する方向へ進めています。
PTCはWindchill AIを、PLMワークフローに埋め込まれたAIとして位置づけ、製品データの理解、定型作業の自動化、意思決定支援、さらに「agentic digital thread」という考え方まで打ち出しています。AIが価値を出す前提として、信頼できる製品データとデジタルスレッドがあることを明確にしています。
SiemensのTeamcenter Copilotは、PLM内の知識ベース、セマンティック検索、RAG、権限制御を通じて、企業内の文書や製品情報に根ざした回答を返す考え方を示しています。これは、AIが外部の一般知識ではなく、自社のPLMデータを根拠に動くべきだという典型例です。加えて、Siemens Industrial Copilotも、設計・計画から運用・保守まで産業バリューチェーン全体を支援する方向性を示しています。
Arasは、構造化データと非構造化データをまたぐAI支援検索や、自然言語での知識活用を打ち出しています。PLMとデジタルスレッドを基盤に、製品データへのアクセスや解釈をより実務的にする方向です。
Dassault Systèmesは、AIをVirtual TwinやOntology、Generative Knowledge & Know-Howと結びつけ、データを検証可能な知識へ変える方向を示しています。ここでも重要なのは、AI単体ではなく、モデル、データ、文脈を結びつける基盤的な考え方です。
CONTACT SoftwareのFourier AIも、製品ライフサイクル全体にAIを埋め込むための基盤として位置づけられています。BOM処理や要件管理など、Digital Thread上の各ポイントでAIを活用する考え方は、まさにAIエージェント時代のPLMの一つの方向性といえます。
つまり市場全体は、「AI搭載PLM」という表現を超えて、AIが活躍できる製品情報基盤をどう作るかという方向へ進みつつあります。GBSが打ち出したいメッセージは、この流れと本質的に重なっています。
AIエージェント活用例
BOM活用
AIエージェントは、部品表を読むだけでなく、構成差分の把握、類似部品の再利用候補抽出、調達影響の確認、変更候補の洗い出しまで支援できます。ただし前提になるのは、BOMが統一された粒度・属性・版管理で整備されていることです。BOMが部門ごとに分断され、名称ゆれや属性欠落が多い状態では、AIは正しい再利用提案も影響分析もできません。
多品種・多仕様のBOM管理について
製品の仕様やオプションが増える場合は、BOMの粒度や版管理だけでなく、製品バリエーションをどのように表現・管理するかも重要になります。
製品ファミリー全体の構成候補を管理する150% BOMと、特定仕様の100% BOMの違い、構成ルールの考え方については、別のコラムで詳しく解説しています。
設計変更
設計変更は、AIエージェントが価値を出しやすい領域です。変更要求の要約、関連文書の収集、影響対象部品・図面・試験項目の抽出、過去類似案件の提示などは、実務での有効性が高いテーマです。しかし実際には、変更理由、承認履歴、変更前後の差分、関連成果物がPLM上で一貫して管理されていなければ、AIは部分的な補助しかできません。
図面検索
図面検索では、「品番を知っている人だけが探せる」状態から脱却できるかが重要です。AIエージェントが自然言語で「この機能を持つ部品」「過去に似た構造の図面」「この規格に関わる設計例」を見つけられるようになると、設計初期の検討スピードは大きく変わります。ただし、図面そのものだけでなく、メタデータ、版、関連仕様、変更履歴までひも付いていなければ、検索結果の信頼性は上がりません。
技術文書
仕様書、試験規格、作業標準、品質文書、過去トラブル報告書など、製造業には「あるが見つからない」「読めるが使い切れない」文書が大量にあります。知識ベース化されたPLM文書に対してAIが対話的に回答できれば、ベテラン依存の軽減や立ち上がり期間短縮に効果があります。逆に、文書が散在し、どれが正なのか分からない状態では、AIは誤誘導のリスクを高めます。
過去案件の再利用
AIエージェントは、過去案件を「検索対象」から「再利用資産」へ変える可能性を持っています。類似製品、類似部品、類似要求、過去の不具合対応、顧客別カスタマイズ履歴を横断して参照できれば、設計の初手が変わります。ですが、案件情報、成果物、変更履歴、技術判断の根拠がPLMや関連システムでつながっていないと、再利用は結局人の記憶頼みのままです。
プロジェクト管理
プロジェクト管理でも、AIエージェントは進捗報告の要約、遅延要因の抽出、未完了タスクと設計変更の関連把握、会議前の論点整理などで役立ちます。ただし、タスク、成果物、承認、課題、設計変更が別々のツールで管理されていて関係性が見えない場合、AIは状況説明の補助にはなっても、意思決定支援までは届きません。
AIエージェント時代にPLM導入を考えるポイント
AIエージェント前提でPLM導入を考えるなら、機能一覧やパッケージ比較だけでは不十分です。重要なのは、「将来、AIが使える情報基盤になっているか」という視点です。
1. 製品情報の正本をどこに置くか
BOM、図面、仕様書、要求仕様、変更情報の正本管理を曖昧にしたままAIを載せても、答えの信頼性は上がりません。まずは製品情報管理の中心を定義することが必要です。
2. 構造化データと非構造化データを分断しないか
AIエージェントは、BOMのような構造化データだけでなく、PDF、Word、図面、スキャン文書、議事録などの非構造化データも横断して価値を出します。両者を関連付けて扱えるPLM設計が重要です。
3. 設計変更を履歴ではなく知識として扱えるか
変更票を残すだけでなく、「なぜ変えたか」「どこに影響したか」「再発防止にどう生かすか」まで追える設計が、AIエージェント時代の変更管理には求められます。
4. 権限・承認・トレーサビリティを保ったままAIが使えるか
製造業でAIを使ううえでは、便利さ以上に統制が重要です。誰が何を見られるか、どの版を根拠にしたか、どの回答がどの情報源に基づくかを担保できることが必須です。
5. ERP、文書管理、品質、プロジェクト情報とつながるか
AIエージェントは単独システム内より、複数システムをまたいだ時に真価を発揮します。PLMを核に、ERP、QMS、文書管理、プロジェクト管理との連携を見据えたアーキテクチャが必要です。
6. API連携や将来のAI拡張が可能か
ChatGPTをはじめとする生成AIや各種AIエージェントを活用するには、将来的なAPI連携、検索基盤、RAGなどの接続性も重要になります。今の運用課題だけでなく、将来のAI活用余地を見越してPLMを設計すべきです。
7. Fit to Standardだけで終わらないか
標準機能に業務を合わせることは依然として重要です。しかし、AIエージェント時代には、その標準化が「AIが読める・つながる・再利用できる」状態につながっているかまで問われます。これからのPLM導入では、Fit to Standardに加えて、Fit to AIの視点が必要です。
GBSがご支援できること
GBSは、PLMを単なるシステム導入テーマではなく、製造業DXを支える製品情報基盤づくりとしてご支援します。AIエージェントを入れること自体が目的ではなく、AIエージェントが実務で機能するための情報設計、業務設計、運用設計まで含めて考えることが重要です。
- PLM導入支援:現状業務の整理、製品情報の棚卸し、BOM・設計変更・文書管理の要件定義、導入構想策定
- CONTACT Software活用支援:PLM基盤構築、デジタルスレッド整備、将来のAI活用を見据えた情報設計
- CIM Database活用支援:設計情報・技術情報の蓄積と再利用性向上、検索性改善、業務知識の資産化
CONTACT Fourier AIのように、PLM上の情報を前提にAIを活用する選択肢は今後さらに増えていきます。ただし重要なのは、特定のAI製品を先に決めることではありません。まず、自社のBOM、図面、文書、要求仕様、設計変更、案件情報が、AIエージェントにとって使える状態にあるかを見極めることです。
GBSが考えるこれからのPLMは、設計情報を管理するためだけのものではありません。AIエージェントが、設計、開発、製造、品質、保守にまたがって活躍するための基盤です。
Fit to Standardから、Fit to AIへ。
この視点でPLMを見直すことが、これからの製造業DXにおける競争力の差につながります。
FAQ
Q1. AIエージェントがあれば、PLMは不要になるのでしょうか。
A. いいえ。むしろ逆です。AIエージェントが実務で価値を出すには、信頼できる製品情報基盤が必要です。PLMは、AIが参照する情報の正本・版・関係性・権限を管理する役割を担います。
Q2. ChatGPTを導入すれば、設計業務はすぐ効率化できますか。
A. 単体導入だけでは限定的です。ChatGPTや生成AIは有力ですが、PLM、ERP、文書管理、BOM、変更管理とAPI連携し、業務文脈を持たせて初めてAIエージェントとして機能します。
Q3. なぜBOMがAI活用の鍵になるのですか。
A. BOMは製品構成の中心情報だからです。部品間の関係、影響範囲、再利用候補、原価や調達への波及など、多くの判断がBOMを起点に発生します。BOM品質が低いとAIの提案精度も下がります。
Q4. 図面やPDFが大量にあります。これでもAI活用は可能ですか。
A. 可能ですが、整理が前提です。版管理、属性付与、関連情報とのひも付け、OCRや検索性改善が必要です。文書が散在したままでは、AIは「見つけたように見えて、使えない」状態になりがちです。
Q5. AIエージェントと生成AIは同じ意味ですか。
A. 厳密には異なります。生成AIは文章生成や要約などのモデル機能を指すことが多く、AIエージェントはそこに検索、ツール実行、システム連携、業務フロー遂行まで含めた実行主体を指します。
Q6. まずAIツールを入れてから、後でPLMを整えてもよいですか。
A. 一時的なPoCなら可能ですが、本番活用では限界が出やすいです。情報基盤が未整備だと、回答の根拠、更新追従、権限、トレーサビリティの問題が残ります。
Q7. AIエージェント時代のPLM導入では、どの部門が関与すべきですか。
A. 設計部門だけでなく、情報システム、DX推進、品質、製造技術、場合によっては経営層も含めた横断体制が望まれます。AI活用はシステム導入ではなく業務基盤再設計に近いテーマだからです。
Q8. デジタルスレッドとPLMはどう違うのですか。
A. PLMは製品情報を管理する基盤であり、デジタルスレッドはその情報を設計から製造、品質、保守までつなぐ考え方です。AIエージェントは、このつながりがあるほど高い価値を出しやすくなります。
Q9. CONTACT Fourier AIのようなAI基盤は、どのような企業に向いていますか。
A. 製品情報をPLM上で整備しながら、将来的にBOM、要件管理、文書活用、デジタルスレッド全体でAIを使いたい企業に向いています。ただし、先に情報基盤の整備方針を固めることが重要です。
Q10. PLM導入は、AI活用を前提にすると難しくなりませんか。
A. 難しくなるというより、目的が明確になります。単なる管理効率化ではなく、「AIが業務で機能するための情報基盤をつくる」という視点が加わるため、導入意義を社内で共有しやすくなります。
AIエージェント時代のPLM導入をご検討中の方へ
AIエージェントを業務で活用するには、AIそのものだけでなく、BOM・図面・文書・設計変更情報などを整理した製品情報基盤が重要です。
GBSでは、PLM導入支援、CONTACT Software / CIM Databaseの活用、AIエージェントを見据えたデータ整備・業務設計までご相談いただけます。
関連ページもご覧ください
PLMに関する基本的な考え方についてはPLMとは?をご覧ください。
AIエージェント時代のPLMを具体的に検討する際は、PLM導入支援、CONTACT Software、CIM Databaseの各ページもあわせてご覧ください。
参考情報
- PTC / Windchill AI
- Siemens / Teamcenter Copilot
- Siemens / Industrial Copilot
- Aras / AI-Assisted Search and Intelligent Assistant
- CONTACT Software / Fourier AI
- Dassault Systèmes / AI Software
- Autodesk / Autodesk Assistant
- Arena / AI Assistant
- OpenAI / API Platform for Agents
- NIST / Digital Thread for Smart Manufacturing
